家を相続したら名義変更が必要?手続きの流れや注意点など解説

親の家を相続した場合など、「名義変更はしたほうがいいのか?」「名義変更するにはどうしたらいいのか?」といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか?

結論から言うと、名義変更はなるべく早めに行ったほうがいいです。

仮にあなたが家を相続したとしても、名義変更しておかないと、新たな相続人が出てきて、その相続人に反対された場合、あなたは家の相続権を主張することはできません。

そのため、家の名義をご自分に変更し、きちんと権利を主張できる状況にしておくことが望ましいでしょう。

さて、そうなると次に気になるのが、「名義変更はどのようにして行うのか?」ということですよね。

この記事では、相続した家の名義変更をする方法を分かりやすく解説します!

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目次

家の相続が発生したら名義変更しよう

家の相続の名義変更

相続が発生すると、民法の規定により、亡くなった方の権利義務が相続人に承継されます。

家の所有権も継承されるので、相続人は権利が移った旨を登記することができます。

この所有権の移転登記のことを家の名義変更(相続登記)と言います!

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家の名義変更(相続登記)は義務ではなく権利なので、名義変更(相続登記)をするもしないも自由です。

ただ、家の名義変更(相続登記)を行わないと相続トラブルが発生しかねませんし、その後の土地利用や活用に支障をきたす恐れもあります。

家の名義変更(相続登記)は司法書士に依頼するイメージがありますが、要点を抑えることで自分たちでも行うことができます。

家の名義変更(相続登記)の手順

家の名義変更(相続登記)の手続きの流れは次の通りです。

手続きの流れ
  1. 家の権利関係の確認
  2. 相続人の確定
  3. その他証明書の取得
  4. 必要書類の作成
  5. 必要書類への署名捺印
  6. 管轄の法務局への登記申請
次章から、各手続きごとに詳しく解説します!

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家の名義変更(相続登記)の流れ①家の権利関係の確認

名義変更の流れ

家の名義変更(相続登記)をするには、「亡くなった方が家の所有権を持っていた」というのが大前提になります。

そのため、最初に、亡くなった方が家の所有権を有していたかを確認する必要があります。

亡くなった方が家の所有権を持っていたことを確認するには、登記簿謄本を取得する必要があります。

登記簿謄本は日本全国の法務局で所定の手数料(600円)を納めることで取得できます。

所有権は登記簿の甲区という部分に公示されています!

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甲区の最も新しい部分に亡くなった方の名前が記載されていれば、その方が家の所有権を保持していたということになります。

心配な方は取得したその場で法務局の方に確認すると良いでしょう。

登記簿謄本を確認する際の注意点

登記簿謄本を確認する際の注意点としては、次の2点が挙げられます。

注意点
  1. 登記簿は権利が移るたびに新たな名義人を書き足していく
  2. 「所有権がある=登記簿に記載されている」というわけではない

①登記簿は権利が移るたびに新たな名義人を書き足していく

登記簿は、権利が移るたびに新たな名義人を書き足していくという形式がとられています。

そのため、過去の所有者の名前も記載されており、亡くなった方の名前が記載されていたからといって安心してはいけいません。

亡くなった方の名前が記載されているかどうかの確認はもちろん、生前に売買などで他人に権利が移っていないかという点もきちんと確認しましょう。

②「所有権がある=登記簿に記載されている」というわけではない

「所有権がある」ことと「登記簿に記載されている」ことが必ずしも一致しないという点にも注意しましょう。

というのも、登記すること自体は義務でないため、亡くなった方に所有権があるにもかかわらず、登記していなかったりすると、登記簿に名前が記載されていないことがあります。

法律上では、亡くなった方に所有権がありさえすれば、相続によって所有権が承継され、名義変更できます。

しかし、登記事務としては、状況によって必要となる処理が異なるという問題が起きてきます。

こうなると、亡くなった方の名義になっていない原因を含め、問題がややこしくなるので、一度司法書士に相談するのがいいでしょう。

家の名義変更(相続登記)の流れ②相続人の確定

名義変更の流れ

亡くなった方の名義が確認できたら、次は相続人が誰なのかの確認が必要になります。

相続人の確認は、被相続人に関する全ての戸籍謄本を取り寄せて行います!

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法律上の問題としても相続人の特定は重要で、相続関係を証明できなければ、家の名義変更(相続登記)をすることができません。

戸籍謄本による相続関係の確定作業のポイント

戸籍を追うことで相続関係を確定していきますが、次の2つの目的を意識するとスムーズに行うことができるでしょう。

ポイント
  1. 亡くなった方に相続人がどれだけいるのかを証明する
  2. 相続人が相続開始時に生きていたことを証明する

①亡くなった方に相続人がどれだけいるのかを証明する

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどります。

これらの書類から、「配偶者はいるのか?子どもはいるのか?」といった情報が分かります。

この作業において、結婚によって籍が移った子の存在や前妻の子の存在の有無を確認しなければなりません。

そのため、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍が必要になるのです。

②相続人が相続開始時に生きていたことを証明する

相続人は、亡くなった方の相続開始時に生きていることで、初めて権利を継承することができます。

相続発生時に生きていることを証明するには最新の戸籍が必要です!

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仮に、相続人が相続開始前に亡くなっていた場合、代襲相続を考慮する必要がありますし、相続開始後に亡くなった場合は、数次相続を考慮する必要が出てきます。

注意点

戸籍は市区町村役場で取得することができますが、個人情報そのものである戸籍を請求できる人は限られています。

例えば、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍によって婚外子が判明した場合などは、その相続人の戸籍を取得しようとしても取得することができないことがあります。

このような場合、司法書士や行政書士といった専門家に相続手続きを依頼することで戸籍を取得できます。

これらの専門家は、「職務上請求」という権利を持っているので、業務に必要な範囲で戸籍などを取得することが可能です。

家の名義変更(相続登記)の流れ③その他証明書の取得

名義変更の流れ

家の名義変更(相続登記)には、戸籍謄本以外にも次のような書類が必要になります。

必要書類
  • 登記名義人となる相続人の住民票
  • 移転する不動産の評価証明書
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

ここでは、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票が必要な理由を解説します。

家の名義変更(相続登記)に被相続人の住民票の除票などが必要な理由

実は、戸籍だけでは登記簿上の人物が本当に亡くなった方なのか分かりません!

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そのため、住民票の除票または戸籍の附票、つまり「住所が記載されている公的書類」で、住所の記載がない戸籍と登記簿の情報をつなげる必要があります。

戸籍と住民票の除票または戸籍の附票を基本に、都度状況に応じて必要な書類を集めます。

例えば、遺産分割協議をする場合は、「遺産分割協議書」および「遺産分割協議書に捺印した相続人の印鑑証明書」、相続放棄したものがいるのであれば「相続放棄申述受理証明書」などが必要になってきます。

相続放棄に関しては、以下の記事で詳しく解説しています!

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関連記事相続放棄した家はどうなる?絶対に押えておきたい5つのポイント

家の名義変更(相続登記)の流れ④必要書類の作成

名義変更の流れ

一通り書類が揃ったら、手元にある戸籍謄本等を確認しながら書類を作成していきます。

登記関係の書類は、パソコンで作成しなければいけないといったルールもないので、手書きでもかまいません。

ただ、遺産分割協議書などは、ずっと当事者が保管するものなので、手書きでの作成はあまりおすすめできません。

遺産分割協議書を作成する際のポイント

遺産分割協議書は当事者間だけが保管すればいい類のものではなく、第三者へ提出してはじめて意味を発揮します。

簡単に言うと、「自分たちが見て分かればいいようなレベルではダメ」ということです!

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銀行・法務局・税務署・保険会社といった第三者にも遺産分割協議書として認められるような、しっかりとしたものを作成する必要があります。

時には、遺産分割協議書の文言ひとつで申請が通らないということも起こり得ます。

そうならないためにも間違いのないようにきちんとしたものを作成しましょう。

遺産分割協議書には次の内容を明記してください!

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  • 被相続人の氏名と死亡日(氏名は戸籍謄本通りに記載すること)
  • 被相続人の最後の住所・本籍地
  • 誰がどの財産を相続するのか
  • 相続人の署名捺印欄
遺産分割協議書作成時の注意点
  • タイトルは「遺産分割協議書」とすること
  • 被相続人や相続人の氏名・住所を記載する場合は全て戸籍謄本通りにすること
  • 不動産を記載する場合は、取得した戸籍謄本と一字一句違いのないように記入すること。※間違えると法務局で受理されない
  • 相続人の印鑑は全て実印で押すこと

登記関係の書類を作成する際のポイント

登記関係書類とは、法務局に提出するためだけに作成する申請書類です。

登記関係の書類についても遺産分割協議書と同様、一字一句の間違いも許されません!

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法務局の審査は非常に厳しいので、誤字脱字だけでなく、正字俗字の取り扱いにも注意しながら正確に作成してください。

正確さが求められる登記関係書類ですが、提出する書類の数はそんなに多くはありません。

実務的には以下の2つの書類を作成します。

  • 登記申請書(登録免許税の収入印紙を貼る台紙を含む)
  • 登記委任状(権利者が委任する場合のみ)
登記申請書については法務局のサイトで確認してください!

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相続関係説明図

相続関係説明図とは、「相関図」とも呼ばれ、被相続人と相続人の関係を視覚的に図にしたものです。

相続関係説明図は、法律上は必ずしも作成する必要はありませんが、実務上、作成する必要があります。

相続関係説明図があると相続手続きの申請先が瞬時に相続関係を理解できるので作成しておいたほうが絶対に便利です!

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なお、法務局で家の名義変更(相続登記)をする際に相続関係説明図があると、戸籍謄本を提出しても還付してくれます。

戸籍謄本は集めるとなると結構な費用がかかりますし、様々な場所に提出するので、原本を返してもらえるのはありがたいですね。

家の名義変更(相続登記)の流れ⑤必要書類への署名捺印

名義変更の流れ

状況によっては、作成した書類に関係者が署名捺印する必要があります。

「遺産分割協議書」や「特別受益証明書」などが該当します!

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不動産の所有権は非常に重要な権利なので、上記の書類に押した印鑑の印鑑証明書も必要になってきます。

特に、遺産分割協議書は相続人全員で行わなければ無効になるので注意しましょう。

署名捺印する際のポイント

遺産分割協議書など、相続人全員が一堂に集まって署名捺印する必要があると考えている方も多いのではないでしょうか?

実は、署名捺印のタイミングは別々でも問題ありません!

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例えば、仕事が忙しくて都合がつかない場合などは、その人だけ別のタイミングで署名捺印してもかまいませんし、遠方の方などは郵送のやり取りで署名捺印してもらっても大丈夫です。

なお、そのような場合は、「遺産分割証明書」の形式をとる方法も検討してみましょう。

遺産分割証明書であれば、遺産分割協議書と違って、各々の書面を集めることで遺産分割協議書と同様の効力が生じます。

家の名義変更(相続登記)の流れ⑥管轄の法務局への登記申請

名義変更の流れ

書類を揃えて準備ができたら、いよいよ法務局に登記申請をしますが、登記簿謄本の収集とは異なり、不動産を管轄する登記所に対してしか申請ができないので注意しましょう。

ここでは、登記申請の際に知っておくべきことをご紹介します。

家の名義変更(相続登記)における決まり事

家の名義変更(相続登記)には次のような留意点があるので覚えておきましょう!

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名義変更におけるルール
  • 家の名義変更(相続登記)は単独申請である
  • 家の名義変更(相続登記)は所有権の一部のみを移転することができない
  • 家の名義変更(相続登記)は相続人にしか行えない

家の名義変更(相続登記)は単独申請である

不動産登記は権利者と義務者が共同で行う共同申請が原則ですが、相続登記に関しては、権利者側の単独で行うことが認められています。

ただし、相続発生後、一度も相続登記を行っていないことが前提です。

一度相続登記をした後に遺産分割協議を行った場合などは、共同申請となるケースもあり、その際は必要となる書類も変わってきます。

家の名義変更(相続登記)は所有権の一部のみを移転することができない

相続登記は義務ではありませんが、これを行う際は、何回にも分けて行うことはできません。

例えば、法的相続分での相続登記をする場合、自分の持分だけ名義を変更する申請は認められず、全ての相続人に対して名義を移す申請をする必要があります。

ただ、これらの登記は、他の相続人の分の登記も一人で行うことができるので、面倒とはさほど感じないでしょう。

家の名義変更(相続登記)は相続人にしか行えない

相続登記は相続人にのみ認められた簡易な手続きです。

遺言で不動産を手に入れた相続人以外の人物への名義変更は、ここでご紹介したものとは異なる手続きにより登記申請することになります。

登記申請に必要な書類

続いて、法務局で登記申請する際に必要となる書類を確認しましょう。

法務局で登記申請する際は次の書類を準備しましょう!

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登記申請書

相続登記の申請書は、単独申請ということもあって単純なものです。

具体的な記載事項は、法務局のホームページをご覧ください。

収入印紙

相続登記の登録免許税は、収入印紙を申請書に貼付することで納めます。

登録免許税の算出式は次の通りです。

計算式
登録免許税=不動産価格(評価証明書で判断し、百の位以下切り捨て)✕4/1000(相続登記の税率)
この計算式で算出された値の十の位以下を切り捨てた値が登録免許税となります!

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添付書類

法定相続の場合、状況により必要なものは異なりますが、一般的に必要となる添付書類は次の通りです。

添付書類一覧
  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍
  • 相続人の現在戸籍
  • 亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票(相続が起こったことを証明するため)
  • 登記名義人となる相続人の住民票(登記簿に載せる住所を証明するため)
  • 不動産の評価証明書(登録免許税の算定基準となる不動産価格を証明するため)

遺産分割協議をした場合は、これらの添付書類にさらに次の2つが必要になります。

  • 遺産分割協議書(相続人全員が署名捺印したもの)
  • 相続人全員の印鑑証明書

この2つの書類で、遺産分割協議を行ったことを証明します。

また、遺言により家の名義変更(相続登記)をする場合は、上記と異なり、以下の添付書類が必要となります。

  • 亡くなった方の死亡がわかる戸籍(出生から死亡までは必要ない)
  • 検認済みの遺言書(公正証書である場合は検認不要)
  • 権利を得る相続人の戸籍
  • 亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票(相続が起こったことを証明するため)
  • 登記名義人となる相続人の住民票(住所証明情報)
  • 不動産の評価証明書(登録免許税の算定基準となる不動産価格を証明するため)

家の名義変更(相続登記)を自分で行うリスク

名義変更を自分で行うリスク

家の名義変更(相続登記)は、自分でも一人でも行うことができます。

ただし、それ相応のリスクもありますので、ここでは、自分で家の名義変更(相続登記)を行う際のリスクについて解説します。

物件調査を行わないまま家の名義変更(相続登記)することの危険性

法務局の登記官には「形式的審査権」しかありません。

つまり、良くも悪くも、法務局は漏れがあろうが物件が抜けていようが、形式面が揃ってさえいれば受理してしまうということです。

詳しく解説していきます!

管理人

司法書士に相続登記の依頼をした場合は物件調査を行いますが、自分で名義変更した場合は物件調査を行うことはありません。

というより、専門性が必要な物件調査は、一般の方が行うのはかなり難しいです。

もし、物件調査を行わないまま名義変更すると、「建築基準法を満たさい」「不動産の再建築ができなくなる」といったリスクが高まります。

建物を新たに建てられない宅地となると、一気に価格が下がってしまいますし、買い手すら見つからないということにもなりかねません。

マンションも同様で、敷地を漏らしてしまったり、集会所やポンプ室のような共有部の移転漏れをしてしまうと、戸建と同じように価格が暴落してしまいます。

つまり、家の名義変更(相続登記)は形式さえ整っていればいいというものではないのです!

管理人

家の名義変更(相続登記)を司法書士に依頼する場合の費用

名義変更を依頼する費用

大輔

自分で家の名義変更をするのはリスクが高いんだね…
リスクを回避するためにもその道の専門家である「司法書士」に依頼するのがおすすめだよ!

管理人

ただ、司法書士に依頼するとなると気になるのが「費用」ですよね。

実は、司法書士の報酬は依頼者との契約で自由に決めることができます。

それゆえに相場を知らないと、その価格が適正なのかが分からないですよね。

相続登記の平均的な報酬額は10万円前後といわれています。

ただし、相続した不動産の数や手続きの難易度によって報酬額は変わります。

次のようなケースは高くなる傾向があります!

管理人

  • 相続する不動産が複数ある場合
  • 登記を申請する法務局が複数ある場合(相続する不動産が複数の地域に分散している)
  • 戸籍謄本等の取り寄せを依頼する場合
  • 遺産分割協議書の作成を依頼する場合

また、報酬以外に次のような費用が実費として必要となります。

  • 登録免許税
  • 戸籍謄本の手数料
  • 日当、交通費など

家の名義変更(相続登記)を司法書士に依頼する際は、報酬や実費の負担について事前によく確認をしましょう。

まとめ

家の名義変更(相続登記)は、慣れない手続きもあるので戸惑うことも多いと思います。

これらの手続きが「難しい」「煩わしい」と感じるなら、無理せず司法書士に依頼するのもありです!

管理人

また、ご自分で家の名義変更を行う場合、分からないことがあれば法務局に問い合わせてみましょう。

ただし、管轄の法務局を間違えないためにも、事前に法務局の管轄は確認しておきましょう。

ご自分で手続きする手間や正確さと司法書士への報酬を天秤にかけて、納得できるほうを選ぶといいでしょう。

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